青春と、古代ロマンと、フォーミュラー [3月の特集]

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ソネットの季節特集を大和田家の人々がナビゲートします。
季節のイベントに興味津々な大和田家。海に山に街に、毎週、楽しげな場所に顔を出します。泣いて、笑って、喧嘩して。そんな大和田家の季節レポートをご覧下さい。

 

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今回登場する大和田家の人物

卒業シーズンです。ここ大和田家にも今年高校を卒業するしんやくんがいました。大学も決まって明るい未来が待っているしんやくんの門出をごらんください。

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しんやくん「卒業式だっていうけど、何だかあんまり変わらない。いいんだろうか、ぼくはこのままで。」

今日は卒業式だというのに、一足先に裏門から一人出てきたしんやくん。意外と内気な学生生活を送っていたのでしょうか?

しんやくん「部活もせずに友達も作らずに僕の高校生活なんて‥‥いやみんな高校生活なんて何でもないものなのかもしれないしなあ」

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おじいちゃんとバクストンチン君が待っててくれました

おじいちゃん「しんや、卒業おめでとう。」

しんやくん「おじいちゃんこんなところまで散歩に来たの?」

おじいちゃん「だって卒業式なんだろう?友達と一緒じゃないけどいいのかい?」

しんやくん「いや、ぼくそんな仲の良いやつなんていないしさ、今日くらいは一人でいいよ」

おじいちゃん「じゃあ卒業旅行もしないのかい?」

しんやくん「知らない。僕は誘われてないし、行きたくもない」

おじいちゃん「おじいちゃんと卒業旅行に行くか?」

しんやくん「その気持ちはうれしいよ」

おじいちゃん「なら行こうか」

しんやくん「どこへ?」

おじいちゃん「沖縄」

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『老人と海』という文芸作品がありましたね

しんやくん「おじいちゃん…、やっぱりおじいちゃんと行ったら卒業旅行じゃない気がするんだ」

おじいちゃん「そうか、じゃあしんやの思い出の場所を案内してくれないかい」

しんやくん「何だよう、それ」

おじいちゃん「いいじゃないか、せっかく来たんだから。しんやがどんな高校生活を送ったのか見てみたいんだ」

しんやくん「そんなに大したことしてないからいいよう」

おじいちゃん「じゃあその大したところじゃないところを見せておくれ」

しんやくん「帰り道でいいんだろう?じゃ、まあ、一緒に帰ろうよ、おじいちゃん」

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下校途中のコンビニの魅力といったらないですよね

おじいちゃん「しんやはここでビールを買ってたのかい?」

しんやくん「いやだなあ、お酒なんて飲まないよ」

おじいちゃん「じゃあホッピーかい?焼酎で割らずにそのままホッピーかい?」

しんやくん「おじいちゃん僕がどんな人間か分かってるだろう?未成年なのにビールとかビールみたいな飲み物に興味はないよ」

おじいちゃん「なんだあつまらない、ここに思い出はないのかあ」

しんやくん「うーん‥‥ここでさあ、ゴミ箱の上に雑誌があってさ、授業で焼き物の資料写真が必要だったから持っていったよ」

おじいちゃん「焼き物かあ、どんなの?」

しんやくん「これ、今日ロッカー整理してたら出てきたんだ」

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あれま世にも珍しいF1型の土器が

おじいちゃん「これは‥‥意外すぎるものだけどすばらしい出来」

しんやくん「工作の時間ってみんなお喋りしながら作るんだけど、一人静かに作ってたらすごい集中しちゃってできちゃった」

おじいちゃん「うーん、車好きでもないしんやがこれほどのものを」

しんやくん「ムダなところに異常に力がかかった高校生活だったよ」

おじいちゃん「うん、10代の輝かしさというのはそういうもんだよ、しんやくん」

しんやくん「あ、古墳に行こうか」

おじいちゃん「おー、古墳。それは高校生にしてはいい趣味してるなあ」

しんやくん「でも古墳も好きだけどあそこは見晴らしがいいから好きだったんだ」

おじいちゃん「それはなおさら暗い思い出話が聞けそうだなあ、よし連れてっておくれ」

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しんやくん「お父さん!?ここで何してんのさ!」

お父さん「しんや、卒業おめでとう、今日はかっこよかったぞ」

しんやくん「今日来てたんだ。じゃあお母さんも?」

お父さん「先に帰ったけど、お父さんはここに用があってな」

しんやくん「何?」

お父さん「ん?ここはお父さんの高校生活思い出の場所なんだよ」

しんやくん「お父さんも古墳好きだったの?」

お父さん「いいよなあ、古墳」

しんやくん「いいよね、古墳」

お父さん「お、古墳もいいが、これだこれだ」

お父さんとしんやくんは同窓生だったみたいですね、今後も似たような人生を送るのでしょうか?

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サイドカーの土器発見!

おじいちゃん「お前たちシンクロ具合がすごいなあ」

お父さん「このバイクの焼き物を当時埋めたんだ」

しんやくん「お父さんバイクなんて乗ってたの?」

お父さん「いや、乗ってないどころか全然好きじゃない、たまたま雑誌に載ってたから作ったんだ」

おじいちゃん「さすが親子、じゃあしんやのF1も埋めたらどうだい?」

しんやくん「えー、意味あんのかなあ。でも要らないからいっかあ」

おじいちゃん「ほいじゃあ、バクストンチン!」

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バクストンチン君はいつだって便利ですね

しんやくん「あ、なんか切ない切ない」

お父さん「切ないだろう?青春、って感じがするだろう?」

おじいちゃん「F1の土器で青春を味わってる、という事態がまた切ないなあ」

しんやくん「これ、お父さんみたいに掘り返すものなの?」

お父さん「10年でも20年でも、好きなときに掘り返せばいいよ」

しんやくん「何かくだらなくて思い入れもなかったものだったけど、埋めてよかったよ。ありがとう、おじいちゃん、お父さん」

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大和田家の男たち、古墳の上に集う

後日‥‥

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キャスター「ニュースです。飛鳥時代より前の5世紀前半あたりのものと思われる古墳から、F1に限りなく似た形の土器が発見されました」

しんやくん「お父さん、F1って昔からあったんだねー」

お父さん「そりゃあなー、あんだけ速いんだから歴史もあるだろうなー」

おやおやしんやくんの土器が世間をにぎわせてしまいましたね。卒業生のみなさんおめでとうございます。みなさんの学生時代の思い出は大切にとっておいてくださいね。

 

取材と文:季節特集編集部、絵:サワー沢口


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