ウォーキングの達人 [11月の特集]
ソネットの季節特集を大和田家の人々がナビゲートします。 |
今回登場する大和田家の人物
今回は、最近やけにうきうきと出掛けることが増えたおばあちゃんを、おじいちゃんがこっそり追跡します。おじいちゃんは気が気でありませんが、真相はいかに?
本当に散歩?
時刻はお昼過ぎ。今日もおばあちゃんは元気にでかけようとします。
おばあちゃん「それでは、ちょっと出掛けてきますね」
おじいちゃん「ああ。ところで気になっていたんだが、どこへ行っているんだ?」
おばあちゃん「どこというほどでも……。散歩ですよ、散歩」
おじいちゃん「ふぅん。そうか、散歩か」
おばあちゃん「はい。じゃあ行ってきますよ」
おじいちゃん「いってらっしゃい」
散歩に出掛けると言うおばあちゃん
とは言ってみたものの、本当に散歩なのかおじいちゃんには疑わしく思えました。何故なら、おばあちゃんの格好がただの散歩にしては仰々しい感じがしたからです。
おじいちゃん(ひょっとして、不倫というやつじゃないのか? いや、それはないか。)
疑心暗鬼になったおじいちゃん。おばあちゃんが一体どこへ行くのか追跡することにしました。急いで目立たない(と、おじいちゃんは思っている)格好をして、おばあさんの尾行を始めます。
変装したおじいちゃん
変装の準備に少し時間がかかったのですが、家を出てみるとすぐにおばあちゃんの姿を見つけることができました。
おじいちゃん(とても散歩という感じじゃないぞ。)
おばあちゃんの姿を見て、おじいちゃんはすぐにそう思いました。おばあちゃんは背筋をピンと伸ばして、普段より大股でリズム良く歩いていきます。どうも怪しい。
おじいちゃん(誰と会うか知らないが、そいつと会うのがそんなに楽しみなのか。うちのワイフもやりおるの)
おじいちゃんはどんどん不安になっていきます。おばあちゃんの歩くスピードがなかなか速く、追いかけるのも一苦労。
おじいちゃん(はぁはぁ…おや、今度はどこへ行くつもりだろう)
おばあちゃんの進路を伺っていると、その先には公園があります。おばあちゃんはスピードを落とすことなくその公園にずんずんと入っていきます。
おじいちゃん(お、ばあさんあそこでランデヴーするつもりか!)
おばあちゃんが誰かと会う根拠なんてどこにもないのに、おじいちゃんはそう確信してしまいました。早とちりもいいところです。
先行きを案じつつ尾行
おばあちゃんのスピードについていくには、おじいちゃんの体力も限界に近いのですが、あと少しで尻尾がつかめると思い込んでいるおじいちゃんは最後の力を振り絞ります。
するとおばあちゃんが歩いている道の向こう側から、若い男性が歩いてくるではありませんか。
おじいちゃんにとっては怪しい男性
おじいちゃん(あ、もしやアイツが…)
おじいちゃんの疑惑が確信へと近づいた…?
おばあちゃん「こんにちは」
男性「こんにちは」
挨拶を交わす二人
おばあちゃんと若い男性の視線が合うと、おばあちゃんは男性に声をかけました。男性もそれに答えます。チェックメイトでしょうか。
おじいちゃん(ばあさん、わしというものがありながら、そんな、どこの馬の骨ともわからんやつに…)
おじいちゃんは奈落の底に落ちたような気分になりました。おばあちゃんとの思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡ります。
しかし、事態はおじいちゃんが思わない方向に進みました。
スタスタ。
おじいちゃん(!?)
もうだめかと思ったおじいちゃんですが、挨拶を交わした後二人はそのまま何もなかったようにすれ違って行ったのです。
おじいちゃん(ど、どういうことだ?)
状況が把握できないおじいちゃん。しかし、もうこのままおばあちゃんの後を追いかけていく体力はありません。
限界点突破
尾行は諦めておばあちゃんを呼び止めることにしました。
おじいちゃん「ハァハァ、ばあさんや、ばあ、ハァハァ、さん…」
おばあちゃん「あらやだ、こんなレディを捕まえてばあさんだなんて」
おじいちゃん「待ってくれ、待ってくれ。わしじゃ、わし。」
むっとするおばあちゃんを見て、おじいちゃんはササッと変装を解きました。
変装を解くおじいちゃん
おばあちゃん「あら、あなた、何やってるんですかこんなところで。」
おじいちゃん「いや、まあな」
おじいちゃんは、ここの所おばあちゃんがやけにうれしそうに出掛けるのを不自然に思ったことや、真相を突き止めようとして家から尾行してきたことを説明しました。
おばあちゃん「だから散歩って言ったじゃないですか」
おばあちゃんは笑いながらそう言います。
少し歩きながら話すことに
おばあちゃん「散歩というか、正確にはウォーキングね。前まではただの散歩だったんですけど、ちゃんとしたウォーキングにしたらはまってしまいまして」
おじいちゃん「それがウォーキングの格好なのか」
おばあちゃん「そうね、このペースで歩くと結構汗をかくじゃないですか」
おじいちゃん「そうだな、汗びっしょりだ」
おばあちゃん「この季節だし、尚更ちゃんとしないといけません。あなたもそんなカッコウして、風邪ひかないでくださいよ」
おじいちゃん「うん、ちょっくら汗が冷えて来たところだ」
おばあちゃんはおじいちゃんに自分のタオルを渡しました。
汗を拭きながらまだ疑う
おじいちゃん「で、本当にウォーキングだったんだな」
おじいちゃんはまだ少し疑っているようです。
おばあちゃん「そうですよ」
おじいちゃん「だったらどうしてあんなにウキウキしたように歩いていたんだ。普通に歩けばいいじゃないか」
おばあちゃん「普通に歩いたらただの散歩じゃないですか」
おじいちゃん「それもそうか」
おばあちゃん「ウォーキングというのは、背筋を伸ばしてリズムよく歩くものなんですよ」
おじいちゃん「それでそれで?」
おばあちゃん「腰は一定の高さで安定させ、歩幅は普段より大きめに、あとはリラックスして歩きます。」
おじいちゃん「うーむ」
おばあちゃん「正しいフォームで歩けば、あまり疲れずに歩けるんですよ」
おじいちゃん「なるほどなあ」
おばあちゃんによるフォームの説明
おじいちゃんはおばあちゃんの話に納得します。でもひとつ納得できない点がありました。あの男性のことです。
おじいちゃん「ウォーキングはいいとして、あの男は誰なんだ」
おばあちゃん「あの男って誰のことです?」
おじいちゃん「道の途中ですれ違った男だよ」
あの男ってこの男
おばあちゃん「ああ、あの方。誰と聞かれてもわからないですけど…」
おじいちゃん「わからないのにあんな親しげに挨拶するのか」
おばあちゃん「挨拶するのはウォーキングのマナーじゃありませんか。それにウォーキング中によく見かける、一応の顔見知りではありますから」
おじいちゃん「そ、そうかぁ」
おじいちゃんはすっかり安心して気が抜けてしまいました。よほどおばあちゃんのことを心配していたんですね。
おじいちゃん「あ、いたた」
おばあちゃん「どうしたんですか?」
おじいちゃん「ちょっと足を痛めたみたいだ…いたた…」
おばあちゃん「あなた、準備体操はちゃんとやりました?」
おじいちゃん「もちろんしてないぞ。そ、そうか、出掛けてすぐに追いついたのは…」
そうです。おじいちゃんが変装して出掛けたにも関わらず、すぐにおばあちゃんに追いつくことができたのは、おばあちゃんが出発前にしっかりと準備体操をしてきたからなのでした。
おばあちゃん「仕方がない人ですねえ」
おじいちゃん「ああ、すまんな」
こうして二人は仲良く家路についたようです。
仲良し
有酸素運動による健康増進と一部では誰かと仲良しになれると噂のウォーキングは、季節を楽しむのに最適です。
取材と文:季節特集編集部、絵:サワー沢口
大和田バクストンチン君だったんですね アハハー
by o-nigiri (2007-11-02 14:17)