知ったかぶりボジョレー [11月の特集]
ソネットの季節特集を大和田家の人々がナビゲートします。 |
今回登場する大和田家の人物
今回はお父さんがしんやくんに大人の楽しみであるボジョレーヌーヴォーについて詳しく説明してくれます。しんやくんは父の威厳を保つためにちゃんと聞いてあげるのですが、お父さんは最後まで成し遂げることができるのでしょうか。
場所はとあるファミリーレストラン。
有名な絵画の前を通って入店します。
お父さん「今日はボジョレーヌーヴォーについての説明をするぞ。お前は未成年だから飲めないが、まあ、知っておいて損はないだろう。」
しんやくん「そうね…」
お父さんはしんやくんに対して威厳を保つためにときたまこうして特殊講義をはじめることがあるらしく、しんやくんはうんざりした顔です。
しかし今日はいくらでも料理を頼んでいいという条件で、こうやってここまでついてきたのでした。
お父さんとしんやくんが席に着いたところで、早速お父さんの講義がはじまります。
やる気満々のお父さん
お父さん「そもそもボジョレーヌーヴォーのボジョレーっていうのはだな、地方の名前なんだ」
しんやくん「ふーん、ヴォジョレーって地方なんだ」
お父さん「ちがうぞ、しんや。ボジョレーのスペルはBeaujolaisだ。ヴォジョレーなんて言うとかっこつけたつもりがかっこ悪くなるから注意しろよな」
しんやくん「そうなんだ。ボジョレーね」
お父さん「よく覚えとけ」
本当はしんやくんはそんなこと知っているのですが、お父さんの顔を立てるためにわざと間違えたりしているのです。できた息子ですね。
空気を読むしんやくん
ちなみにヌーヴォーのスペルはnouveauです。合わせてボジョレーヌーヴォーBeaujolais nouveauとなります。日本語の表記の際、多少ゆれがありますが、とりあえず「ボ」と「ヴォ」を間違えないようにしておきましょう。
しんやくん「ところで、どうして突然ボジョレーヌーヴォーの話なんてしようとしだしたのさ」
お父さん「よくぞ聞いてくれた。ボジョレーヌーヴォーは毎年11月の第3木曜日に解禁される新酒のワインなのだ。ちょうど昨日だな」
しんやくん「旬のワインなんだね」
お父さん「そうだ。特に日本は時差の関係で本場より早く飲むことができるのでちょっぴり優越感に浸れたりするんだ。」
しんやくん「そんなことでねえ」
しんやくんはお父さんの話が続くように調子を合わせます。
お父さん「ボジョレーヌーヴォーの輸入量は日本が世界一位なんだ。だから時期が近付くと、航空便はワインの輸入でいっぱいになってしまうそうだぞ。」
しんやくん「ワイン業者以外にとってはいい迷惑だね。」
お父さん「日本人らしいといえば、日本人らしいな。で、これが実物。」
しんやくん「ちょっと、こんなところで出すなんて」
お父さん「大丈夫、大丈夫、少しくらいなら怒られはしないって」
嬉々としてかばんからワインをチラ出しするお父さん
そういういいかげんなところがお父さんの威厳を損なっているとしんやくんは思います。
しんやくん「あ、そうだ。注文しておいていい?」
お父さん「そうだな。好きなのを頼んでいいっていう約束だったな」
しんやくん「やったー!」
しんやくんはメニューを一通り見ると、テーブルのわきにあるボタンを押して店員さんを呼びました。
メニューを見ながらあれこれ注文
しんやくん「これとこれとこれとこれとこれとこれと…あと、これとこれも。」
店員「かしこまりました」
お父さん「ちょっと頼みすぎじゃないか? そんなに食べられるのか?」
しんやくん「もちろん食べられるよ、好きなものを頼んでいいって言ったのはお父さんだからね」
お父さん「確かにそうだが……」
お父さんは、父に二言はあってはならないと腹のうちで我慢しました。
物事には対価が必要なのです。父の威厳を保つのも例外ではありません。
と言いつつこっそり財布をチェックするお父さん
お父さん「で、ボジョレーヌーヴォーの味についてなんだが…」
しんやくん「続くのか……」
お父さん「もちろんだ。」
知っていることばかりを説明されるしんやくんはちょっと退屈ですが、それを表に出さないように気を使います。
お父さん「しんやはどんな味がすると思う? ボジョレーヌーヴォーは。」
しんやくん「わからないよ、ワイン飲んだことないもん」
お父さん「はっはっは。そうだった。」
お父さんはかなり上機嫌のようです。
お酒が飲めないならドリンクバーがあるさとしんやくん
お父さん「ボジョレーヌーヴォーは普通のワインと作り方が違うんだ。だから味も違う」
しんやくん「どんなふうに作るの?」
お父さん「知りたいか?」
しんやくん「もったいぶって時間かけないでくれよ」
お父さん「わかったわかった」
お父さんはボジョレーヌーヴォーの作り方について説明します。
続々と運ばれてくる料理
チョリソーとお父さん
お父さん「ボジョレーヌーヴォーの作り方はな、まず9月にとれたガメイ種というぶどうを、房のまま密閉タンクに放り込むんだ。そして二酸化炭素を充満させたタンクの中で置いておく。こうすることでフルーティで飲みやすいワインになるわけだ。」
しんやくん「そうなんだ。それは知らなかった」
お父さん「ちなみに赤ワインだけで、白ワインはないから注意しなさい。でもボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーと呼ばれる、厳選されたブドウがから作られた少しグレードの高いものもあるから、そういう違いを楽しむのもおもしろいかもしれない」
グレードの高いお父さん
しんやくん「といっても僕は飲めないんだけどね」
お父さん「早く大人になることだな」
しんやくん「いいよ、僕はこうやってイタリア料理を食べるだけでも十分満足だから」
お父さん「そうだな、本場のワインには本場の料理があうものな」
本場のワインと本場の料理…?
明らかな間違いに気づくしんやくん
しんやくんは一瞬怪訝な顔をした後に、指摘していいのか戸惑いながらも言いました。
しんやくん「父さん、ボジョレーヌーヴォーはイタリアじゃなくてフランスのワインだよ」
お父さん「えっ……」
モンブランと青ざめるお父さん
ボジョレーヌーヴォーの産地はフランスです。いいところまで行ったのに、最後の最後でお父さんの知ったかぶりが明らかになってしまいました。惜しかったですね。
こうして小和田家の夜は更ける
もし知ったかぶりをするなら基本的なところは絶対に間違えないように。
取材と文:季節特集編集部、絵:サワー沢口
タメになりました。家族に話してみようと思います。
お父さんのネクタイは相当お洒落ですね!
by o-nigiri (2007-11-16 16:51)